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旅も登山も風景や花があって、幸せを感じます。豊かな気持ちになれます。

読み聞かせ童話「鬼切丸」
昔あるところに、空が明るく開けていて豊かな村がありました。
北側は切り立った崖があり、南側には作物に適した肥沃な土地がありましたが、東西を抜け
る道は一本があるだけで、南北を走る幾筋かの川に沿ってできている路を使って、村人たち
は、お互いが不自由することなく行き来していました。
道の西側は険しい山になっていて、峠には大蛇が棲んでおり、そこを通る人は飲み込まれて
しまうのだと言われ、東側も高い山に囲まれていて、その峠には白い虎が餌を求めて徘徊し
ているので、こちら側からも人が通ることはできませんでした。
ですから、村人が村から出るということは決してなく、外から誰かが入ってくるということ
もない閉ざされた地となっていました。
村人たちは誰もが互いに顔見知りであり、和やかで、他人の子供でも我が子我が孫として慈
しむのが自然にできていました。
人の往来はなくても、遠い都が戦乱で荒れ果て、日が暮れると百鬼が夜行するのだと、どこ
からともなく伝わってきていました。
同じように、この地が桃源郷であるとの噂も、桃の花びらが風に乗って、外の地に伝わって
いても不思議ではなかったのです。
そんなある日、北の険しい断崖を越えて、山頂に棲んでいた鬼が麓の村に降りてきました。
畑を荒らして作物を奪うばかりではなく、民家を襲って蓄えを持ち去ったり、時には子供を
攫っていくなど、暴虐の限りを尽くすのでした。
初めは一匹だけの鬼しかいませんでしたが、楽をして獲物を得られることに味をしめ、子分
たちが集まってくるようになり、やりたい放題のありさまになっていきました。
彼らを追い払う力がない村人たちは、いつの間にか自分だけ被害に会わなければ良いと思う
ようになって、鬼に内通して我が身の安全だけをはかる者が出てきたので、互いに疑心を抱き
始めるようになりました。次第に人々の心は荒れていきました。
幼い孫と二人で暮らしていた長老のお爺さんが、これではいけないと、村の鎮守の森に祀ら
れている古い祠の神様にお祈りしました。
自分は老い先短い身であるにしても、可愛い孫の将来を考えないわけにはいきませんでした。
その姿を見ていたまだ童女の孫は「お祖父ちゃん、私のことだけでなく、村の人皆が幸せに
なるようにお祈りしないと、神様は聞き届けて下さらないわよ。」と幼いながら意見しました。
しばらくすると、お祖父さんが最も恐れていたことが起こりました。鬼の大将が、孫の童女
を生贄として差し出せと言ってきたのです。酒の肴として喰らうのだというのです。
差し出さねば、他の10人の子供を攫うというのです。
「いいわ。私一人で他の人たちが助かるのなら、私はいくわ。」幼いながら健気でした。
隣の家に、同い年の少年が住んでいました。いつも仲良く遊んでいた少年は、それを聞くと
「よし、それなら俺も一緒に行く。ご先祖様から伝わっている小刀があるから、それで鬼の
大将を退治してやる。」と勇気を出して申し出たのでした。
とても敵う相手ではないことは解っていましたが、何もしないというわけにはいきませんで
した。
神様というのは、自分で立ち上がろうとしたとき現れるのかもしれません。
「ほ~お、随分面白そうな話をしているな。」突然傍から声がしました。
居る筈のない、村人以外の若い侍でした。
武者修行で各地を旅して廻っているというのです。
「よくぞご無事で峠を越えて参りました。大事なかったのですか?」とお爺さんが尋ねると
「何の何の。途中で何やら現れたが、切り抜けて参ったわ。」と答えました。
「その鬼とやら、修行の足しに拙者が退治してくれよう。」その若い武士は、鬼切丸という
名刀を腰に手挟んでいました。
「どれ、道案内致せ。」物見遊山に行くかのような気楽な言い方をした武士は、童女と少年
を連れて、岩山の方に向かいました。
鬼達の住処には山門があり、赤鬼と青鬼の門番がいました。
門番は、武士の気迫に圧倒され、大将の下にすっ飛んで行きました。
それを追って、武士は難なく山門を突破し、鬼の大将と向かい合いました。
鬼の大将は、大鉞を振り上げて襲い掛かってきたのですが、鬼切丸はたった一太刀で大鉞ご
と雷光とともに鬼を斬り伏せてしまいました。
麓に戻った武士は、大きなお結びをもらうと、あっという間に姿が見えなくなりました。
村には平和が戻りました。
村の鎮守の森にある洞には「勇気」という立札が残っています。
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