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旅も登山も風景や花があって、幸せを感じます。豊かな気持ちになれます。

童話「きもだめし」

信濃の国(現在の長野県)の伊那谷に、高丘の森と呼ばれているところがあります。

そこは、昔の豪族のお墓であったとされる前方後円墳です。

古びてはいても、荒らされてはいないで、地元の人たちが敬い畏れている場所でした。

道からすぐに見えるところに、大きな石を組み合わせて造られた石室の入り口がみえます。

その石室に丑三つ時(午前2時頃)に入ると、壁の一部に穴が開いて、そこから4キロ

メートルも離れている山まで通じているのだと言い伝えられていました。

でも、なんとなく薄気味悪くて、誰もそれを試してみたことはありませんでした。

 

太郎は、いじめられっ子でした。子供たちが集まるといつも泣かされていました。

あるとき、ガキ大将が子供たちを集めて「肝試し」をすると言いだし、太郎にも参加す

るようにと命令しました。

「肝試し」というのは、度胸があるかないかを競う遊びです。

大抵は、お墓や深い森など、人が恐れて近づかない場所を選んでおこなわれます。

今回は、高丘古墳の石室が選ばれました。

ガキ大将が一番最初に穴の中に入って行ったのですが、怖くなってしまって、1分もし

ないで出てきてしまいました。

次々に順番で入って行った子たちも似たようなもので、青い顔をしてすぐに出てきてし

まいました。

最後は、太郎の番でした。太郎も恐ろしくて仕方ありませんでしたが、いつも勇気を出

すところを見せないから、皆に馬鹿にされるのだということは、自分でもわかっていま

した。今回は頑張ってみようと決心していました。

穴に入ってしばらくすると暗闇に目が慣れてきました。石の壁に寄りかかっていると、

そこが突然開いて、別の穴が通じていることに気がつきました。

太郎は勇気を出すと、その穴の中に足を踏み入れて、先に進んでみることにしました。

穴は光苔(ヒカリゴケ)にでも覆われているのか、ほのかに明るかったのです。

どんどん進んで行くと少し広い場所があって、そこが行き止まりでした。

小さな石の棚があって、その上に小判が何枚か乗せられていました。

肝試しというのは、目的地まで行ったという証拠を持って帰らなければならないのが決

まりなので、その小判を1枚懐にいれると、太郎はもと来た道を帰ることにしました。

太郎が外に出てみると、ガキ大将をはじめとする子供たちは、誰一人残っていませんで

した。

太郎がいつまでたっても穴から出てこないので、みんな恐くなって逃げ帰ってしまって

いたのです。

仕方がないので、太郎は一人で暗い道を歩いて家に帰りました。

翌朝になると、子供たちが恐々太郎の家を覗きに集まってきました。そこに太郎が顔

を出すと、みんな安心して太郎の勇気を褒め称えました。

それからは、太郎がいじめられることは決してありませんでした。

小判は、太郎の一生の宝物になりました。

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