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小説「夏風越の」 隼人外伝 4

何日かして、使いに出た家人が、屋敷の周りを窺う不審な者の姿を目にした。武家屋敷で

 

あるから濫りに討ち入る愚は犯すまいにしても、隼人が去り際に言い残した言葉「先ほど

 

の者たちがつけてきているかも知れ申さぬ。気配りはして参ったが、彼らをまくほどにし

 

て来たわけではござらぬゆえ、しばらくは用心めされよ。もし不穏な気配があるようなれ

 

ば遠慮は無用、お知らせくだされよ。」に頼ることにした。

 

迷惑な依頼であるとは承知しながら、隼人なれば大きな騒ぎにせずに納めてくれそうに思

 

ったということもあるが、もう一度お会いしたいと思う心の方が思慮に勝った。

 

付け狙われるような悪巧みを耳にしたというわけではないが、聞かれたかも知れぬと疑う

 

側の存念は計り知ることは叶わぬ。見境をなくす可能性はあり得るから、手段を選ばぬ行

 

動に出ることへの備えはするに越した方が良いと思いつつも、隼人に知らせるについては

 

面映ゆさもあった。薙刀をとれば、おめおめ遅れをとるとも思えぬ。僅かばかりの縁に縋

 

って人様に迷惑をかけるより、敵わぬまでも戦って、いざとなれば潔く死ねばよいのだと

 

いう覚悟もあるからであった。

 

隼人が自ら眼前に姿を現したのを見た時、小雪はそれこそこれで死んでも良いと思ったの

 

であった。心の底から嬉しかったのである。

 

人は、我がことのみを思うのでなく、他人への思いやりがなくてはかなわぬ。善き人たち

 

との縁も広げなくてはならぬ。一人ではないのであるとする隼人にしてみれば、当然のこ

 

とであった。

 

隼人が屋敷内に入るのを何処かから窺っていたのか、その後数日たつも際立った変化は起

 

こらなかったのであるが、そろそろ大丈夫かと隼人が思い始めた早朝、白羽の矢が飛来し

 

軒先に深々と突き立ったのであった。

 

白羽の矢が突き立つのは、この地の伝説であるが、この300年絶えてなかったこと。

 

狒狒は、いうなれば異界からの魔物。姫宮神社近くに鎮めの石が据えられていたのである

 

が、何時の間にか少しずれていた。そこからの瘴気が漏れ出して、心ゆがんだ人に憑依し

 

てしまっているかも知れぬ。それは災いを広げる。

 

気づいた時点で、隼人はそこに籠目の結界を張った。籠目とは、かごめかごめ籠の中の鳥

 

は、と童歌に唄われる六芒星。

 

ときを置かずして、城下の八か所に正八角形の照魔の結界も張り終えてはいるが、用心に

 

越したことはない。

 

「小雪殿、早速なれどお支度めされよ。これより城中にご案内申す。」隼人がこのところ

 

懸念していることに関わりがあることに思えたからであった。

 

こうして、小雪は隼人からの預かり人として、掘大和の守の庇護の下におかれることにな

 

ったのである。権現山の鳴動は、相変わらず続いていた。

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小説 「夏風越の(なつかざこしの)」 

幕末から現代に生まれ変わって、超常現象を介して話しが進むシリーズ。

http://aa3take.web.fc2.com/syortstory1.html 

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